人事異動の目的

企業で働く社員にとって気になる人事異動。自分の意に反する配置転換になるケースも。ここでは、異動の種類や社員は拒否できる?など「人事異動の目的」について紹介しています。
サラリーマンとして働く上で、避けられないのが人事異動です。
「毎年人事異動の時期になると、ソワソワする」という方もいれば、突然異動を告げられ、あたふたする方もいることでしょう。

では、なぜ会社には人事異動があるのでしょうか。
異動の目的や時期、出世との関わりや拒否権の有無など、会社員として働く上で頭に入れておきたい人事異動について解説していきます。

人事異動の主な目的は「人材育成」

企業で人事異動が行われるのは、あらゆる人材を適材適所で働かせ、そして次世代を担う人材を育成していくためです。
たとえ同じ会社で働いていても、所属する部署、そして自身の立場によって、携わる業務の内容は大幅に違ってきます。
会社の成長と社員の成長がリンクするよう、今いる人材を効率よく育成していく必要があるのです。

また、社内で仕事をしている人材の全てが、「自分にとって最も能力を発揮できる場所」で働いているとは限りません。
より良い環境の中で、社員の才能を開花させていくことが、企業にとっても成長なポイントとなります。
異動により社員一人ひとりが視野を広げ、社員の成長=会社の成長へと導くことが人事異動の目的なのです。

人事異動には様々な種類がある

一般的に、人事異動は春先や7月〜10月が多いといわれ、この中には様々な種類の「異動」が含まれています。
人事異動の種類を頭に入れておき、人事異動を命じられたら自身の異動がどれに当てはまるのか、チェックしてみるのも良いでしょう。

昇進

人事異動の中でも、最もおめでたいのがこちらです。
現在よりも、地位や立場が上がる人事異動を指す言葉です。
現在が平社員であれば、新たに役職がつくケースが多いはずです。

降格

昇進とは反対に、地位や立場が下がってしまう人事異動のことを降格と言います。
降格を命じられた人にとっては、受け入れがたい人事異動の一つですから、根拠や理由を明らかにすることが大切です。

配置転換

勤務先企業は変わらないものの、働く部署が変更になる人事異動です。
「同じ企業」とはいっても、これまで「総務部」で働いていた人が突然「営業部」で仕事をすることになれば、業務内容は大幅に変わります。
希望して異動する場合を除いては、慣れるまでに時間やストレスがかかります。

転勤

在籍する会社は変わらないものの、働く場所が変わるのが転勤です。
県外への転勤となると、引越しや単身赴任が必要となるケースも多く、心理的・肉体的な負担も大きくなりがちです。

出向

こちらも、在籍する会社は変わりません。
しかし、働く場所が子会社や関連会社に変更となります。
子会社や関連会社の業務を行いながらも、雇用契約は元の会社と結んでいる状態で、毎月の給与や賞与は出向元企業から受け取ることになります。
但し、業務の指示命令権は子会社や関連会社側が持つことになり、その方針に従って仕事をすることになります。

転籍

出向と似た意味で使われるのが転籍ですが、こちらの場合は「雇用契約も出向先企業と結ぶ」という特徴があります。
出向先の企業の社員として仕事をして、そこでお給料をもらうことになります。いわゆる、片道切符といわれる異動です。
待遇も所属先企業の査定となるので、労働者の負担は大きくなります。

人事異動を拒否することは?

会社の仕事全体の流れを良くするために行われる人事異動。
そこで働く人にとっては、当然「自身の意向に沿わない異動命令」が下されることもあるでしょう。
こんな時に気になるのが、以下の2点です。

労働者に拒否権はあるのか?
異動命令を断った場合どうなるのか?

この疑問点を、詳しく解説していきます。

人事権の濫用に当たる場合は拒否できる可能性も

人事異動に関して、まず頭に入れておきたいのは「会社側は人事権を持っている」ということです。
この人事権とは、労働者の採用や転勤・昇格・降格・部署移動、そして解雇などを行う権利を指しています。
会社側が行う人事異動は、この「人事権」に基づいて行われるもの。
基本的に断ることはできません。

但し、例外にあたる人事異動命令も存在しています。
以下のパターンに当てはまる時には、拒否できる可能性もありますから、一度チェックしてみてください。

企業との間で結んでいる雇用契約に違反した異動を命じられた場合
差別的な対応で異動を命じられた場合
業務上、人事権を行使する必要性がない場合
労働者にとって不利益が大きい場合

もし、このような異動命令や、契約や規約を無視した人事異動を命じられたら、一度総務や外部の専門家に相談してみると良いでしょう。

その他の人事異動を拒否できるケース

上記以外に、拒否できる例としては、近年増えている「子育て」「介護」を理由にした人事異動の拒否です。
まだ幼い子供を養育していたり、年老いた両親を介護していたりする場合に、「自分しか面倒を見る人がいない」ということもあるでしょう。
転勤を伴う人事異動では、応じるのが難しいことも考えられます。
この場合も、会社側に事情を説明し理解してもらうことで「人事異動を拒否する理由」として認められる可能性があります。

人事異動は受け入れるのが基本

会社が行う人事異動には様々な目的があり、労働者は命令に従うのが基本です。拒否した場合、懲戒解雇や減給となるケースもあります。
気分が進まない異動先でも、まずは与えられた職場でチャレンジすることを考えてみましょう。
退職や転職は、チャレンジ後でも遅くはありません。
異動をチャンスと捉え、次につなげるポジティブ思考で自分の気持ちを高めていってください。